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プロダクトアウト・マーケットインどちらを選択するべきか。

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企業が商品の開発や販売活動を行う上で、「プロダクトアウト (product out、product oriented) 」と「マーケットイン (market in、market oriented) 」という考え方がある。

このうちプロダクトアウトとは、供給側(作り手)の技術や強味を基準にして商品やサービスを開発することである。一方で、消費者側が必要としているものを把握し、それをベースに開発することをマーケットインと呼ぶ。 要は、供給側の視点で作れるもの・作りたいものを開発するのか、消費側のニーズに沿った商品を開発するのかという違いである。

消費側のニーズを100%無視した商品開発はあり得ないし、その逆もまた然りである。実際は両方の要素を併せ持った場合が多いので、プロダクトアウトなのか、マーケットインなのかという二元論で考えることにあまり意味はない。

プロダクトアウト主導で開発された商品と、マーケットイン主導で開発された商品の事例を見てみながら、商品開発においてどのようにアプローチをとるべきなのか考えてみよう。

プロダクトアウトとマーケットインの事例

故スティーブ・ジョブズは、「顧客が望むモノを提供しろ という人もいるが、私の考えは違う。人々は皆、実際に”それ”を見るまで、”それ”が欲しいかなんてわからないものなんだ。だから私は、市場調査に頼らない。」と言っている。

上記で言うところの “それ” を、企業側の視点で形にした場合、ここではプロダクトアウトと呼ぶことにする。一方で、顧客ニーズをリサーチし、それに応える形で商品開発を行ったケースをマーケットインと呼ぶことにする。

1.Google インターネット検索エンジン

今では殆どの人が使ったことがあるであろうGoogle検索を例にとって考えてみよう。

※上の動画説明・・・初期のGoogle検索。1998年ごろからおなじみのカラーと共にGoogleのロゴが登場。検索Boxの下にも様々なリンクが表示されるようになった。

Google検索が登場する前からも、「情報を簡単に探したい」という潜在的なニーズはあった。しかしながら、当時の時点で「キーワードを入力すると、それに関する世界中の情報が表示されるような検索エンジンがあったらいいな」と考えていた人はほとんどいなかったはずだ。

「情報を簡単に探したい」という潜在的な顧客ニーズをふまえつつも、自らの強みを生かしつつ、インターネット検索エンジンという独自のインターフェイスで答えたという点で、Google検索はプロダクトアウト型開発の要素が強いといえる。

2.アサヒ スーパードライ

1889年創業のアサヒビールは、国内トップシェアを誇るビールメーカーである。今では殆どの酒場で見られるほど高いシェアをもっているが、実は1984年にシェア量が史上最低となったことがある。この事態をふまえ、当時の村井勉社長が「消費者の求める商品を提供する」という消費者志向の方針を打ち出し、5000人の消費者嗜好調査を行った。

この大規模調査の結果をもとに、それまでになかった「辛口」というビールの新しいコンセプトで開発されたのが「アサヒ スーパードライ」である。消費者の「こんなビールが飲みたい」という嗜好を的確に捉え、限りなく追及した商品を開発することで結果を出したことから、マーケットイン型開発の成功例といえる。

3.ナイキ エアマックス95

ナイキ社の靴に対する開発アプローチは、これまでも多くのプロダクトアウト型を取ってきたといえる。

代表的な例としては、90年代の日本において社会現象を巻き起こすなど、当時のファッションシーンを煽動するほど大きな影響を与えたスニーカー、エアマックス95が挙げられる。

エアマックス95のデザインは、消費者からのニーズを形にしたものではなく、 デザイナーであるセルジオ・ロザーノが人体解剖学の本からインスピレーションをうけた結果生まれたものである。開発時はその斬新なデザインゆえに、ナイキ社内でも好みは極端に分かれて意見がまっ二つ、反対派の声も多く市場からの反応は全く予想できなかったという。

デザイン要素の強いファッション分野においては、消費者のニーズは潜在的であり、それを顕在化させるためにセンセーショナル性を重視するケースが多い。 エアマックス95においては、革新的なデザインによるセンセーショナル性とプロダクトアウトがうまくマッチした好例であるといえよう。

プロダクトアウト・マーケットインどちらを選択するべきか

では、「これから新商品を開発しよう!」となったときに、プロダクトアウトとマーケットインのどちらをベースにして進めるべきだろうか。それにはまず、開発しようとしている商品の市場においてコモディティ化(どこの企業の商品を購入しても大差のない状態のこと)が進んでいるかどうかが一つの判断基準になると思われる。

もしコモディティ化が進んでいる市場の場合は、マーケットインを主導にして顕在化している消費者のニーズを的確にとらえ、それに答える形で付加価値の付与や高機能・多機能化など差別化アプローチを取るのが良いであろう。

またこの場合、販売開始前後の販促戦略にも予算をかけたほうが良いと思われる。逆にコモディティ市場でプロダクトアウト型のアプローチを取った場合は、市場が成熟しているため独占的な利益を見込むことは難しく、労多くして功少なしという結果になる可能性もある。

一方で、コモディティ化が進んでいない市場の場合、もしくはこれから市場ができていくような状況の場合、プロダクトアウト型主導のアプローチを取ることによって、独占的な利益を得られる可能性がある。徹底的なプロダクトアウト型のアプローチをとることによって開発する企業の「強み」や「らしさ」を活かし、イノベーションを起こすことができるかもしれない。

※上の動画説明・・・多くのプロトタイプを作って徹底的なプロダクトアウト型アプローチをとったiPhoneは、周知のとおり強烈なイノベーションを引き起こした。

ただし、商品開発で力尽きて、新しい価値を顧客に伝えるためのプロモーションに力が割けないといった事態にならないよう余力を残しておくことも重要だ。

成熟化した市場においても、 ファッション市場のようにセンセーショナル性が受け入れられる市場の場合は、ブランディングや既存イメージ脱却のためにプロダクトアウトのアプローチをとることも一つの手である。

※もちろん、商材のタイプや、開発に至る背景や市場状況、またリサーチ・開発・販促にどれだけの資金をかけられるかによって適切なアプローチは変わってくるのは大前提である。

開発のフェーズごとにも、プロダクトアウト要素を強くすべきフェーズがあれば、マーケットインのアプローチが必要なフェーズも出てくるはずだ。ただいずれのフェーズにおいても、ニーズを的確にとらえていないマーケットインや、強みを生かしきれないプロダクトアウトに陥らないよう注意しておきたい。

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